2人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
そう思っていた矢先に、れみが重い口を開く。
「もう、畳むんですよ……お店」
「えっ……」
人員不足で経営が上手く行っていないのか、値段が高いのか、理由は分からない。
ただ私は、不意をつかれた回答に開いた口が塞がらない。
「私達の必要としている原料が、全部奪われたんだ」
奪われた? 誰に?
「こんなにちっちゃくて栄えてない町だもの。全部盗賊に盗られたんだ」
その時れみが、悲しそうに笑った。
「常連さんが沢山いるのに、なんだか寂しいよねっ」
なんだそれ。
よくも分からない理由で、このお店がなくなってしまう。
ペペロンチーノ。それしか食べたことがないが、頬っぺたが落ちてしまうくらい美味しいのに。
価値なんてものは、見た目じゃない。
「何にも分からないし知らない私だけど、私は……ここが好きだ。なくなってほしくない」
「ありがとう……でも、どうしようも出来ないんだ」
「私──私が、何とかする」
根性なんてない。ただ、何処からか沸沸と自信が湧いてくる。
最初のコメントを投稿しよう!