3.華の都とペペロンチーノ

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そう思っていた矢先に、れみが重い口を開く。 「もう、畳むんですよ……お店」 「えっ……」 人員不足で経営が上手く行っていないのか、値段が高いのか、理由は分からない。 ただ私は、不意をつかれた回答に開いた口が塞がらない。 「私達の必要としている原料が、全部奪われたんだ」 奪われた? 誰に? 「こんなにちっちゃくて栄えてない町だもの。全部盗賊に盗られたんだ」 その時れみが、悲しそうに笑った。 「常連さんが沢山いるのに、なんだか寂しいよねっ」 なんだそれ。 よくも分からない理由で、このお店がなくなってしまう。 ペペロンチーノ。それしか食べたことがないが、頬っぺたが落ちてしまうくらい美味しいのに。 価値なんてものは、見た目じゃない。 「何にも分からないし知らない私だけど、私は……ここが好きだ。なくなってほしくない」 「ありがとう……でも、どうしようも出来ないんだ」 「私──私が、何とかする」 根性なんてない。ただ、何処からか沸沸と自信が湧いてくる。
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