……本編……

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 こうして始まったカフェであるが、やはり実際にやってみると、足りない部分も見えてくるし、色々手を広げたくなるというか、欲も出てくる。だから僕は、ある日火朽さんに告げた。 「火朽さん、僕、ホットサンドが作りたいんです。それと、パンケーキ」 「――軽食を出すんですか?」 「できたら……それに、パスタとかも置きたくて」  僕が言うと、吐息に笑みをのせて、火朽さんが優しく笑った。 「砂鳥くんは、料理が向いているかもしれませんね。最近では、お皿の洗い方も上達して、僕も助けてもらっていますし」  我が家――僕とローラと火朽さんで暮らす、カフェに隣接した住居スペースにおいて、家事を担っているのは、火朽さんだ。ただ、最近では、僕も少しずつ手伝うようにしている。手伝えるようになったというのが正しい。  以前であれば、やり方が分からなくて僕は逆に火朽さんの手を煩わせていた。例えばお皿を洗い直したり……けれど最近は、僕が洗ったお皿はきちんと使用可能だ。  その後、僕は各種のパスタや、サラダ、スープ、野菜を挟んだパンケーキや、ホットサンドの作り方を覚えた。こちらも最初は搬入で良いのではないかと思ったのだが――より妖怪薬のエッセンスをスパイスとして加えやすかったから、簡単なものだし、自作する事に決めたのである。  妖怪薬という名前だが、これは場所によって様々な名前がある。フェアリー・ミルクという名前だったり、ナーサリーライム・エッセンスと呼ばれたりもする。  さて――そんなある日、藍円寺さんと共に除霊のバイトに出かけていたローラが、帰ってくると僕を見た。 「今日から営業時間を変えろ」 「え? 朝十時から夜八時じゃだめなの?」
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