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そんな中で、無人のお店を見て、僕もローラのように、趣味と実益を兼ねた仕事(?)をしてみようかな、と。マッサージと称してお祓いをするように、例えばCafeで特別な効果があるお茶を出して、その力でお祓いをしても――やる事は同じだと、まず考えた。
同時に、メニューにほとんど何も書いていなかったので(お客様が来ないから)、それが少し寂しかったのもある。空っぽのショウケースを見て、ここに甘いケーキが並んでいるのも良いなと考えた。
しかし、僕の腕前は上がったと思うが……自画自賛ではなく、僕のお茶を飲んでくれる限定四名からの評価だ……問題は、飲んでくれる相手が四名しかいない事である。それは、ローラと火朽さん、そして藍円寺さんと、火朽さんの大学の同級生の紬くんだ。
マッサージを行わないので、最近ローラが店を開ける事は無い。だから、ローラのもとを訪れた藍円寺さんか、火朽さんと一緒に遊びに来た紬くんに振舞うしかない。折角だから誰かに飲んで欲しいし――僕も、趣味と実益を兼ねたいという考えもある。
そう考えながら、マカロンを口に運んでいると、ローラが現れた。
住居スペースのリビングにいた僕の、正面のソファに彼は座った。
黒い髪に、どこか紫色に見える猫のような瞳をしている。
「砂鳥、最近、街の連中はこの店を『絢樫Cafe』と呼んでいる。誰も、『Cafe絢樫&マッサージ』とは呼ばないらしい」
それを聞いて、僕は頷いた。
「だって、マッサージをしていないし。ローラは働いていないから、仕方ないんじゃない?」
「――そうじゃねぇよ。俺が言いたいのは、店の名前を分かりやすく、そちらに合わせるべきだという事だ」
「カフェをしっかりやるの?」
「おう」
「ローラならお茶も淹れられそうだね」
ローラは一切家事をせず、火朽さんに押し付けているが、僕と違って出来ないわけではないらしい。僕はお茶の淹れ方こそ覚えたが、元来家事は苦手だ。
「ん? お前が働くんだ。どうして俺が働くんだ? 俺には、別の仕事が出来た」
「え、僕が?」
「ああ。最近、妖怪薬と人間の嗜好品の茶にこってるんだろう? 丁度良いだろ?」
「――うん。僕はやってみたいけど……ローラの新しい仕事っていうのは?」
僕が尋ねると、ローラが唇の片端を持ち上げた。
「藍円寺と一緒に除霊の仕事をする」
「なるほど。僕も、それが良いと思うよ」
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