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しかし――なるほど。
ローラが僕を連れてきた理由に納得してしまう。僕は完全に、このメンバーの中において、斗望くんの保護者役を宛てがわれているらしい。少しだけ歩く速度を落として、僕は斗望くんの隣に並んだ。
「斗望くんは、何処に行きたいの?」
「僕は、これ。スペース・ウォーズ!」
パンフレットを斗望くんが僕に見せた。何やら宇宙モティーフの絶叫マシンらしい。ジェットコースターだ。
「芹架くんは?」
続けて僕が尋ねると、芹架くんも頷いた。
「俺は……斗望が行きたい所に行きたい」
背の高い芹架くんを見ていると、斗望くんの保護者に見えない事もないのだが、言葉を聞いていると、そちらも声変わりしているとはいえ――少々内気な小学生だとしっかり思える。最後に僕は、水咲を見た。
「水咲は?」
「――俺はこちらが良い」
どこでも良いと帰ってくるかと思ったのだが、意外にも水咲は、パンフレットのある箇所を指した。そこには、このテーマパーク最大の、この国においても最大級の、高速ジェットコースターが記載されていた。
本日は人間らしい私服であり、狐耳と尻尾も人間には見えないようにしている水咲だが、僕の目には、嬉しそうにその耳が揺れたのが気配で分かった。
「じゃあ、スペース・ウォーズで腕慣らしをしてから、ビッグラジエルに取り掛かろう!」
斗望くんがまとめると、芹架くんと水咲さんが頷いた。僕も笑顔で頷く事にした。
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