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本来、ローラもまた除霊される側の存在ではあるが、ローラのように強い魔は、より弱い魔を、殲滅・消失させる事が可能だ。それは、人間のいう浄化と同じ行為だ。人間である藍円寺さんの除霊よりも、よっぽど効果がある。
「そこで、看板を変えようと思うんだ」
「何にするの?」
「――絢樫Cafe……&藍円寺とかにしたかったんだけどな、藍円寺に拒否された」
「由緒正しいお寺の名前を勝手に付けるのは、僕もまずいと思うよ」
「だって、藍円寺に依頼が来るんだぞ? なら、ここを窓口にしても良いと思ったんだ」
「その辺は、藍円寺さんだって心霊協会に何か登録していたりするんだろうし、ローラは藍円寺さんから教えてもらえば良いんじゃないの?」
僕が言うと、ローラが何度か頷いた。
新南津市心霊協会というのは、この新南津市の独特の公的機関だ。除霊業者がバッティングしたりしないように調整したり、大規模なお祓い案件の際には協力して行動を起こせるように、設置されているらしい。
そんな機関が存在するくらい、妖や怪異、心霊現象はこの土地に根付いている。人間という生き物は、「お化けなんかいない」と、何かと合理化という作業を心の中で行う事が多いのだが、この新南津市の人々は、「幽霊? いるいる!」と考える場合が多いようだ。
というのも、紬くんのご先祖様が、この土地に結界を築いて、沢山の妖魔を閉じ込めて、定期的に浄化するようにして以来、妖と共に暮らす地域の人々に、霊に対する耐性がどんどんついていった結果らしい。玲瓏院結界というそうだ。
それを最初に構築し、現在も貼り直す時に要の役割を果たす玲瓏院家はこの土地で非常に――霊能力だけではなく、人々への影響力や権威が強いらしい。玲瓏院紬くんは、そのお家の次の当主だという。
ちなみに藍円寺さん――藍円寺享夜さんは、玲瓏院家の分家筋だという。お兄さんが二人いて、一番上は朝儀(アサギ)さんというシングルファーザーで、斗望(トモ)くんという子供がいるそうだ。二番目のお兄さんは、僕も何度か会った事がある、昼威(ヒルイ)先生というお医者さんだ。
ただ、僕達三人のように力ある妖から見ると、人間の構築する結界なんて、有って無いようなものだから、実害は今の所無い。
「まぁ、そういうわけだから、砂鳥。お前がカフェを頑張ってくれ。既に、『絢樫Cafe』という新しい看板を発注済みだ。午後には届く」
最初から決めていたらしく、相談では無かったようだ。ローラは、いつも自分で決めるわけであるし、今回もいつもと同じだったと言える。
こうして――正式に、絢樫Cafeは始動する事に決まったのである。
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