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「兼貞と一緒のロケなんだ。負けるわけにはいかない。全てにおいて、俺は勝つ!」
「あれ? 共演は基本的に無いんじゃなかったの?」
首を傾げている紬を見ながら、俺は溜息をついた。
「――呪鏡屋敷よりはマシで俺にも対処可能な……とはいえ、兼貞にはどう考えても荷が重い場所にロケへと行くらしいんだ。呪鏡屋敷の件を聞いたプロデューサーが、俺の事務所とあちらの事務所に話を通した……」
本当は俺に対処可能かは怪しかったが、紬に心配をかけるわけにもいかないので、俺は見栄を張った。
「大変そうだけど、兼貞さんが出るなら、視聴率が高いだろうし、絆が今より売れるチャンスが来るかも知れないよ。応援してる」
応援は嬉しいが、一言余計である。俺は悔しくなって、じっと紬を見た。
「……別に兼貞の力なんか借りなくても、俺は自力で……む、むしろ俺が手伝ってやるんだ。いい迷惑だ!」
「あれ? でも、もう心霊番組の季節は終わったんじゃないの? もう冬の準備?」
「いいや。夏の特番の評判が良かったから、試しに深夜とWebその他で少し展開して、軌道に乗ったら、心霊バラエティとして続けるそうだ。ゴールデンタイムに」
俺の言葉に紬が目を見開いた。
「すごい! 絆の時代が来るかも知れない!」
「だから、おい! 俺は、俳優志望で、演技がしたくて、オカルト路線で行きたいわけじゃないんだ!」
思わず叫んで、俺は近くにあったタオルを紬に投げつけた。すると華麗にキャッチされて、それは折りたたまれた。その後、紬は俺の旅支度を手伝ってくれた。
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