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それでも確かに、怨霊が屯しているベッドで寝るよりは……良い、のか? 悩みつつも俺は起き上がった。兼貞は寝台に座り直すと、俺を手招きした。
「早く」
「……」
「ほら」
しかし助けてもらったのは事実である。俺は唇を噛みつつ、兼貞の寝台へと向かった。すると兼貞が横になって壁際に詰めた。俺は隣に腰掛けてから、ゆっくりと横になる。
「わ」
兼貞は、そんな俺を横から急に抱きしめた。狼狽えて声を上げた俺を見ると、兼貞がクスクスと笑った。
「じゃ、チュウさせてもらう」
「な」
俺の頬に、兼貞が口づけた。俺達は男同士である。なんだこれ。呆然としていると、今度は兼貞が俺の唇を指でなぞった。
「お、おい……ん」
そしてそのまま、俺の唇を奪ったのだった。
その瞬間――俺の体から力が抜けた。おかしい。何かがごっそり抜けていく感覚がする。
「やっぱり美味しいな」
唇を離すと、今度は兼貞が俺の額にキスをした。だが、俺の体はもう抵抗しようという気にすらならないほどに弛緩していた。本当、なんだこれは? そう思った次の瞬間には、猛烈な眠気に襲われて、俺はそのまま睡魔に飲まれて眠ってしまったようだった。
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