……本編……

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「だから変な事をするなって言ってるだろ!」 「ごめん、ごめん」  悪びれもなく兼貞が笑った。俺は不貞腐れつつ、静かに双眸を伏せた。  すると疲れきっていたのか、すぐに睡魔が訪れた。  ――翌日。  本日は村の散策だ。カメラマン達が廃墟を撮影しに行くという間、俺と兼貞は二人で(……)不穏な場所を確認する作業を任せられた。こちらも本当にまずい場所は避けて撮影する予定なのである。  朽ちた木造の小屋を一瞥しながら、俺は坂を下る。元々は家畜が飼われていたらしい。動物霊の気配が濃い。多分何体も、餓死している。あまりにも空気が禍々しくて、俺は目眩がした。口元を押さえながら、兼貞を見る。 「兼貞さん」 「んー? 遥斗で良いよ?」 「……兼貞」 「まぁそれも呼び捨てといえばそうだな」 「お前、具合悪くなったりしないのか? 俺は視ているだけで気分が悪い」  どうせ二人なのだからと、俺は上辺を捨てた。すると兼貞が、腕を組んだ。 「一応、色々対策してから来てるから」 「それは俺だって一緒だ」 「なんだろうなぁ。実力の違いかな?」  兼貞の声に、俺は顔を歪めた。キャリアだけでなく、こちらの方面でまで敗北するとは思ってもいなかったのだ。この空気の中で平気だとするならば、兼貞の腕前――少なくとも準備をしたのだろう兼貞の周囲は、俺より有能な可能性が非常に高い。兼貞にも、俺にとっての紬のような存在がいるのだろうか?  その後、あんまりにもこの場所は危険なので、日没までの間に撮影は終わりとするよう進言し、この日のロケを終えた。あとは帰るだけだ。今夜を乗り越えれば、船が迎えに来てくれる。俺はシャワーを浴びながら、ホッと一息ついた。 「今日こそは、変な事をするなよ」  その夜も、俺は兼貞のベッドにお邪魔する事にした……。 「俺としては、今日こそ最後だし、もっと絆が欲しいなぁ」 「は?」 「――まぁ、気を取るのは、さ。相手の中に、こちらへの愛情が無いと効果が薄いから、俺は強制奪取も可能だけど……今回はキスで満足しとく」 「次回なんかないし、キスもするな」  断言してから俺は布団をかぶった。そんな俺の腹部に腕を回している兼貞は、変態趣味でもあるんじゃないかと疑いそうになる。陰陽道の関連だとしても、抵抗なくあっさりと男にキスをするというのが、俺には信じられなかった。  このようにして――翌日には、無事に迎えに来た船に乗り、俺達は帰還したのだった。
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