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俺は、兼貞の背中に、おずおずと腕をまわし返してみる。するとより強く抱きしめられた。
「俺こそお礼が言いたい。絆がいてくれるから、俺は毎日頑張れる」
「それは、俺もだ」
「じゃ、一緒だな。これからも、ずっと一緒にいればいいって事でもある」
そのまま暫くの間、俺達は抱き合っていた。
なお、今でも俺は考える。
――俺は、オカルトを売りにしたいわけじゃないのに! と。
でも、でも、例外もある。
兼貞という、人を愛して喰らう、そんな存在に出会える場合だけは、オカルトも悪くはないんじゃないかと。恋のきっかけなんて、実に様々だから、そこにオカルトが加わっても構わないと、最近の俺は考えるようになった。
「絆、愛してる」
「俺も、兼貞が好きだ」
その後俺達は、再び唇を重ねた。俺は静かに瞼を閉じながら、この幸せが永遠に続きますようにと、一人静かに祈ったのだった。そして、俺を愛して喰らうその者は、俺の願いを裏切らない。
――´完 ――
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