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「ぁ、ちょ……ん!」
一度角度が変わったので俺は拒否しようとしたが、すぐに再び唇を塞がれる。歯列をなぞられ、口腔を嬲られる。その内に、俺の体から力が抜け始めた。全身がフワフワする。
「あ、あ、離せ……!」
「目、潤んでる」
「お前のせいだろうが!」
「感じた?」
俺は弛緩した体で、兼貞の上から動けない。感じたか否かと言われたら、認めたくないが、多分巧かった……が、これは違う。砕果島の時と同じように、俺の体からカクンと力が抜けてしまったのだ。あの時との違いは眠くならない事だけで、全然体に力が入らなくなってしまった。
「俺に何をした?」
「だから気を貰ったんだよ!」
「許可を取れ!」
「ん? 許可を取ったら、貰って良いのか?」
「安心しろ。許可を出す予定が無い」
思わず兼貞を睨むと、喉で笑われた。
「やっぱり絆は、美味いな」
「嬉しくない。離してくれ」
「良いよ」
頷くと兼貞が俺から腕を離した。しかしここで問題が発生した。俺の側に力が入らず、兼貞の上から動けないのである。
「……おい、兼貞」
「何?」
「俺を非常に丁寧な仕草でソファに座らせてくれ」
「それ、お願い?」
「っ……」
「俺としてはずっとこのままでも良いんだけどな」
兼貞が悪いというのに、何故俺がお願いする形になっているというのだ。悔しくなったが動けないので、俺は顎で頷いた。その瞬間――兼貞が俺を反転させて押し倒した。
「な」
後頭部をクッションにぶつけた俺は、兼貞を睨めつけた。
「丁寧にって言っただろうが! それに俺は、座らせろと言ったんだ!」
「――この体勢なのに強気だな。状況、分かってるのか?」
「へ?」
「俺は今、絆を押し倒してるんだけどな」
「!」
その言葉に俺は目を見開いた。確かに言われてみれば、そうなのである。動けない俺の顔の両脇には、兼貞の手がある。そして胸の上には兼貞の重みもある。兼貞は、今度は真剣な顔をして俺を覗き込んでいる。
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