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「いい加減にしろ!」
再び唇が離れた時、俺は叫んだ。すると兼貞は、俺の耳の後ろを指先でなぞりながら、余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「けど――体、熱くなってきたんじゃないのか?」
「な」
……認めたくないが、若干事実でもあった。実はキスをされる度に、力が抜ける代わりにじんわりと体の芯が熱を帯びていく気がしてはいるのだ。感覚で言うと、ムラっとしているに近い。
「気を抜くとな、抜かれた人間は、三大欲求が高まるんだ」
「は?」
「食欲、睡眠欲、性欲――食事は済ませてきた所だし、まだ眠くなるには早いだろ? そうなると、残るは一つだ」
それを聞いて、俺は殴られたような衝撃を受けた。
その間も、兼貞は俺の耳を擽り続けている。繊細な手つきで、優しく優しく俺の耳の後ろをなぞったり、耳の中に指先を入れたりするのだ。兼貞の吐息が俺の頬に触れる。艶やかな奴の髪の毛も、俺の顔に触れている。非常に良い匂いがする。
「は、離せ……」
「嫌か?」
「嫌に決まって……」
「そんなに真っ赤な顔で言われても説得力に欠けるけど」
それを聞いて、俺は自分の頬が熱い事に気がついた。そうしたら、更に赤面してしまった。まずい。このままでは、非常にまずい。
「良いから離せ!」
「やだ」
「俺に何をする気だ!」
「だから、絆を食べたいんだって。絆、美味しいから」
「冗談じゃない。もうキスはしたんだから、良いだろう!? 離してくれ!」
「全然足りない」
兼貞はそう言うと、俺の首筋をペロリと舐めた。思わずビクリとしてしまう。同時に、服の上から俺の左の乳首を弾いた。
「ちょ!」
「んー?」
「やだ、やめろ! どこ触ってるんだよ!」
「どこって?」
「っ……お、おい!」
服の上から、ゆるゆると兼貞が俺の乳首を摘んでいる。何ということだ! 普段は存在など意識しない場所なのだが――奇妙なほどに、ゾクゾクする。
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