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「じゃあライバルっていうのは、通行人BかD?」
その言葉に、俺は思わず紬を睨んだ。
「違う。売れていないオカルトタレントだ」
「絆以外にも、オカルトを売りにしている人なんているの? この時代に?」
「――ああ。兼貞遥斗」
すると紬が目を見開いた。呆気にとられた顔をしている。
「その人知ってる。僕がいつも読んでる雑誌の読モで、そこのグランプリを取ってさ、すごいよね! 僕の憧れのコーディネートをいつもしてるんだ。すごいモデルで、めっちゃイケメンだと思ってたら、やっぱねぇ、デビューしたよね! 中学時代から読んでいたから、僕は嬉しかったよ」
それはその通りなのだが、俺は思わず目を据わらせた。
「……俺は、そのライバル誌の正式なモデルをしていたが?」
「うん。でもほら、僕と絆は服の方向性が違うから」
「まぁな。顔が同じだから、服ぐらいでは、個性を出さないとな」
……複雑な心境ではあるが、これは普段からそう思っている。俺と紬は、本当に顔面造形は同一と言って良いのだ。
「だけど安心した。あの人、春にもドラマの準主役ポジだったし、確かこの夏には、出演映画が公開だってネットの広告で見たし、秋には初の主役のドラマがやるんじゃないっけ? 二時間ドラマらしいけど。全然、微塵も、欠片も、まったくもって、絆のライバルポイント、無いよ。ゼロ! 良かったね、安心しなよ」
思わず俺は、その言葉に、牛乳パックを叩きつけるようにテーブルに置いた。
「違う。聞け。あいつは、俺から見ると足元にも及ばない霊能力を売りにしているんだ」
「へぇ。知らなかった」
「――それで、夏のバラエティの収録で、例の呪鏡屋敷に行ったらしい。そこで、無駄に結界を破壊したそうだ。元々、先んじて近隣住民が呪符を剥がしていたらしいんだが、決定打を与えたのは、やつだ。兼貞だ」
「ふぅん。だけど、それがどうして、絆に関係があるの?」
純粋に疑問そうな紬を見てから、俺は思わず俯いた。
「……冬に、新しい映画の撮影が入っている」
「おめでとう。通行人Aとか?」
「ち、違う! 初めての――その、主演なんだ」
「え!? すごい!」
「だが……W主演もので、そ、その……もう一人の主演が、兼貞なんだ」
心底ここまでの流れを思い出して嫌気が差しつつ、俺は答えた。
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