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「……朽葉さん。何の用ですか?」
ベッドに寝転がる私の上から、異様に美しいその人が覗き込む。
「柘榴」
「……はいはい。わかりましたってば」
有無を言わせないその冷たい眼差しには、すっかり慣れっこだ。
私が少しでもいじけたり、不満気な様子を見せると、朽葉様は非常に不機嫌になってしまう。
「はあ……」
暫く無言で見つめ合っていると、またしても大きな溜息を一つ落として、私を起き上がらせてくれた。
「……リビングに行っています」
「ああ。コーヒーを用意して、」
「もうしています」
「……はい」
朽葉さんの言葉を制してさっさと寝室を出ると、コーヒー豆の香ばしい香りに包まれる。
「今朝の卵焼きは上手に出来たのに……」
今日も大きなダイニングテーブルに並ぶ二人分の食事には、私しか手をつけることはない。
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