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世間では賑やかな正月休みも終わり、冷たい風がより一層強く吹き荒れる今日。 私、千春は、バイトの六連勤中、五日目を終えようとしていた。 「マスター、ここのお花がそろそろ枯れそうですよ。明日出勤時にでも買ってきましょうか?」 「本当だ。気が付かなかったよ。やっぱり女の子がいるのはいいね。僕1人じゃきっと暫くこのままだったよ」 はははは。と楽し気に笑うこの人は、私がもう二年程働いている小さな喫茶店のマスターで、名を夏目さんという。 優し気な目元には深い皺が刻み込まれていて、白い顎鬚をしっかりと生やしている姿は、まるでサンタクロースのようだ。 「……では、明日買ってきますね」 質問に対しての答えが返ってこないのは、まあ良くある事なので、私の中で勝手に完結させる。
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