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看板をcloseにして、今日の私の仕事は完了した。 「千春ちゃん、気を付けて帰るんだよ」 「はい。マスターも」 喫茶店の制服から着替えた私は、デニムにタートルネックのセーターを合わせたシンプルな服装だ。 この上に、紺色の足首まであるダッフルコートを着て、ベージュのマフラーを巻けば、防寒対策は完璧。 マフラーの下に隠している髪の毛は、顎程のボブで、薄っすらと茶色に染めている。 少しでも大人っぽく見せたくて、前髪は一度も顎より短く切ったことはない。 喫茶店は十七時からオープンする。 その為、バイトの終わる時間は大体二十三時半過ぎだ。 この時間に女一人で夜道を歩くのは、いくら人通りが多い道とはいえ、少し怖い。 今夜も急ぎ足で家までの道のりを歩く。
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