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「ただいまー」 こぢんまりとした三階建てアパートで、二階の角部屋に一人で住んでいる私は、防犯のために必ず声を掛けてから家に入る。 「あれ?」 パチッと電気のスイッチを押した筈なのに、何度やっても明かりがつかない。 「停電……?」 携帯の懐中電灯を頼りに部屋へと入り、ブレーカーを探していると、ふいに違和感を覚えた。 いつもなら少し歩けば足に当たる筈のベッドも、一人用には少し大きなテーブルも、何も見当たらないのだ。 「何も……ない」 唖然としながら、部屋に佇んでいると、コロンと何かが転がる音がした。 音のする方を振り返ると、部屋にあった家具たちが不自然に積み上げられ、隅の方へ追いやられている。 その不可解な様子に怖気を覚え、背後を確認するも、そこには先程脱いだブーツが転がっているだけだ。
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