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そこで、ふとあることに気が付く。 もしここに不審者がいるとしたら、部屋にのこのこ上がってしまった私は、今とても危険な状況にあるのではないか。 まずい。今すぐここから逃げなければ。 急いで玄関に向かうが、予想外の出来事に体が動くことを止めてしまった。 「千春……」 後ろから私を呼ぶ声が聞こえたのだ。 「え……」 何度も体を動かそうと試みるが、ガタガタと震える事しかできない。 するともう一度、今度は耳元ではっきりと声がした。 「千春」 その直後、ぐにゃりと視界が曲がり、私は意識を手放した。 「捕まえた」 何者かが小さく囁いたその言葉は、誰の耳にも届かない。
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