これが恋と知ってしまったんだ

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しんと静まり返る教室。 そしてその静寂を破るように勢いよく扉を開け、女性が入ってくる。 女性は教卓の前に立つとくるりと背を向け黒板にチョークで名前を書いて再び生徒たちの方へと向き直す。 「えー、私があなたたちの担任の沖なぐさ。気軽になぐさちゃんとでも呼んでくれ。」 静まり返る生徒たちはどう反応していいか分からずただ黙ってなぐさを見つめる。 反応が返ってこなかったなぐさは次第に顔を赤らめて下を向く。 「ごめん、調子に乗った。3年目にしてようやく担任持たせてもらったから少し舞い上がってんのよ。」 顔を真っ赤にしてそういうなぐさを見て生徒たちはようやく緊張が解けたのか、至る所で笑い声が起こり始めた。 「ねえあざみ。綺麗な先生だねー。」 「ええ。」 なぐさの問いかけにそう答えるあざみはどこか不機嫌そうにも見えるがなぐさは特に気にしない。 「まあなんだ。お互い初めて同士というわけで気軽に、そして思い出に残る1年にしよう。」 生徒たちから拍手が起こるとやはりなぐさは赤面して下を向く。 「ではこれより皆さんの自己紹介をしてもらおうと思います。」 では。と右端の1番前の席の少女を指差すとスッと立ち上がりこう言った。 「白百合中出身の君野かえで。将来の夢は可愛いお嫁さん。以上。」
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