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「あたしみんなに言うからね!結城くんはこんな子と付き合ってるって目で見られるんだから!」
ふんっと顔を背けてあたしたちの前から彼女は去っていった。
「はぁ、うるさい女だな」
「でも、大丈夫なの?クラスで変な目で見られたり.......「別に誰にどんなふうに見られようと俺は俺が必要な人間だけが近くにいればそれでいいから。さ、帰るよ」
あたしの心配をよそに結城くんは相変わらずの爽やかな表情で歩き出す。
「.......大丈夫かな」
いくら結城くんがそう言ってもあたしの心配はなくならない。
あたしがもし、結城くん側の人間だったなら同じことが起きても彼女は何も言わないだろうと思う。
彼女が放った〝こんな子〟という言葉があたしの胸には突き刺さる。
結城くんだって出会った当初は〝こんな普通の子〟とか散々な言われようだったのに、気にはならなかった。
それは、あたしの結城くんに対する気持ちが変化しているからなんだと思う。
「なんで、あたし.......そっち側に生まれなかったんだろう」
この学校に入ってからもスペシャリスト科の人たちを羨ましく思ったなんて初めてで。
あたしは初めて世界の違いを痛感した。
こんなこと思いたくなかったのに。
結城くんと出会って、欲張りになってしまった気がする。
うん、やっぱりあたしはこの人が好きなんだ──
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