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「あれ、ナツ」 「煌大くん」 結城くんの家を出て、長い塀の前を歩いていたとき煌大くんとバッタリと会う。 「冬翔のどこ行ってたの?」 「……うん」 「泣いた……?」 ちゃんと結城くんに「痛くなるよ」と言われるくらい拭いたからもう涙はないはず。 「なんでわかるのか……って?」 「……うん」 「泣いたような顔してる。ナツのことならわかるよ」 「……好きになる人間違えたかな」 煌大くんみたいな人を好きになりたかった。 優しくて、あたしのことを分かってくれて、突き放したりしない人。 「やっぱり、冬翔が好きなんだ?」 「……好きになるはずじゃなかったんだけどね」 仮の恋人同士になって、まんまと好きになるなんて単純すぎて誰にも知られたくなかった。 「まぁ、好きになろうとしてなるもんじゃないからな」 「……だよね「おいっ!」 あたしが煌大くんに返事をしたのとほぼ同時くらいにぐいっと肩を掴まれる。 「おいっ」という不機嫌そうな声色とはぁはぁっという切らした息。 「冬翔、そんな息切らしてんの初めてみた」 ぷッと吹き出す煌大くん。 「これ、忘れてる」 煌大くんの言葉に反応するわけでもなく、ただまっすぐにあたしを見てる結城くんはいつもよりも真剣な目をしていて、息が止まりそうになる。
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