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「お前っていつもそんなんだよな。全部自分で抱え込んで一人で解決する。ったく、振り回されるこっちの身にもなれよ。」
「…じゃあそんな事言うんだったら私なんかほっとけばいいじゃん。なんでここまでして追ってくるの!?もう10年も前の話なんだから追ってくるのもどうかと思うけど!!」
私は思いっきり疾風を睨み言い返す
「10年か…もうあれから10年も経ったんだな」
睨み返す私の両頬に手を当てる
「…その分、そこからやり直せばいい…やっと見つけたんだ…」
そして、顔が近付いてくる
優しく口付けをしてくる疾風
私はビックリしたものの受け止めてしまった
何分経っただろう
気付いた時には私は疾風の膝枕の上で寝ている状態だった
「……え……」
「…たく…お前が気絶するとか思わなかった」
「……ごめんなさい!!」
すぐ起き上がり、疾風に謝る私
「キスで気絶する女、初めて見た」
疾風に笑われてムカついた私は、無言で立ち上がり、会議室から出て行く
もう何も喋りたく無かった
こっちはいっぱいいっぱいなのに疾風は余裕があり過ぎて追いついていけない…
定時前、私は色々あり過ぎて仕事が手に付かないまま残業確定…
美優が私に話しかけて来た
「結奈、今日時間ある?」
「残業になるけど待ってくれるならあるけど」
「じゃあ、待ってる」
「どうした?先輩とのこと?」
「……うん、なんかもうどうしていいか本当分からなくて……」
「じゃあ休憩室で待ってて、終わったらすぐ行くから」
「うん」
チョコレート、あめ、お菓子を食べながら今日の業務をこなして行く
1時間後、キリのいい所でやっと終わった
周りを見渡していると、疾風と江坂先輩が楽しそうに話していた
江坂 大和先輩
美優の彼氏だ
『あの2人…この1日でこんな楽しく話すかね?』
と思いながら、帰る準備をする
すると江坂先輩が私に近付いて来た
「お疲れー、美優が休憩室にいたんだけど今から2人でどっか行くの?」
「…そーですけど、何か最近の美優は先輩と別れた方がいいのかとか、どーしていいか分からないみたいです…」
「…あー、そーなんだ…ごめん。色々ありまして…喧嘩が耐えなくなって現在に至るみたいな…」
「だからイケメンって面倒ですよね、じゃあ、美優待たせてるのでお先に失礼しまーす」
私は足早に休憩室に向かう
するとコーヒーを飲んでる美優がいた
「おまたせ、ごめんね」
「お疲れ、全然いーよ」
「じゃあ、飲みながら話聞くよ」
「うん」
2人でエレベーターを待っていると、疾風と江坂先輩が来た
美優が私の服の裾を軽く引っ張り、逃げたい様な顔をしている
「じゃあ、トイレ行こうか」
私は小声で言うと、美優は私の裾を強く引っ張ってトイレへと駆け込む
「ちょっと美優、あからさまに逃げるのもどーかと思うよ、何があった?」
「最近、全然忙しくて会えなくて…サプライズで合鍵持ってたから大和の部屋に入ったら知らない女の人と一緒に寝てた…」
「はぁー?それで?」
「…私、なんかどーしていーか分からなくてその場から立ち去って…その前から喧嘩が多いかったから、もう私は大和にとって用済みって事になったのかなぁーって…」
「…美優の言う事も分かるけど…お互いで話さないと分からないしさ…」
美優は入社当時、研修担当だった5歳年上の江坂先輩に惚れ、告白しても振られ続け、やっと付き合えたのは入社してから2年くらい経ってからだ
だからもう結婚も考えていい時期もとうに過ぎているかもしれないが、江坂さんからもその話は出ないらしい
もう付き合い初めて5年くらいだから…
美優の口から衝撃的な言葉が出た
「親から写真が届いてさ、お見合いしてって…私も大和との将来が見えないからそうしようかなぁーって考えてて、来週末実家に帰るんだ」
「えっ!?その話江坂先輩は知ってんの?」
「知らない
言わない方がいいでしょ」
「もうあの2人いないから、出よう」
私が先に出て、エレベーターホールに2人がいないのを確認する
そして美優と一緒にエレベーターに乗って降りる
1階につきエレベーターのドアが開いた時、疾風と江坂先輩がいた
「行こ」
美優が私の袖を引っ張り、会社を出ようとする
黙って帰るのは失礼だと思い、私は2人に挨拶して美優と一緒に会社を出る
会社を出た後、美優は泣いていた
美優の頭を撫でながら声を掛ける
「今日はいっぱい呑んで
いっぱい話聞くから」
「…うん」
駅近くの居酒屋に入り、生ビールを頼む
美優は勢いよく飲みながら今までの鬱憤を晴らすかの様に話す
「…私はねー、2年好きで好きで今でも好きで好きで堪らないんですよ
でもね、もう付き合って5年、6年経つのですよ
結婚も考えるし、色々将来の事を考えるけど、大和からは何もそういう話出てこないし、私からしても逸らされるし、喧嘩も増えた…
全部私からじゃんと思ったら…
もう別れた方がいいのかなぁーって」
「…うん、分かるよ
分かるけど、江坂さんの話も聞かないと分からないよ」
「結奈さん!
私達、5年付き合ってるんですよ
長い間付き合ってたら、どんな感じなんか分かりますよ、雰囲気で
大和は雰囲気で『今喋ってくんな』って出してんですよ」
「…あー、確かに…」
「仕事では話さないといけないけど、プライベートでは今あまり話したくない
だって知らない女と一緒に寝てるなんてあり得んでしょー」
「…あー、まぁね」
「全部私だけ…
大和は全然私の事好きって言ってくれない…
私と我慢して付き合うくらいなら……
大和から別れを告げて欲しい……」
美優は泣きながら顔を埋め、そのまま寝てしまった
私は、もう一杯呑んで会計を済まし、美優を起こしタクシーに乗って美優の家に向かう
美優の家は2階建のコーポの2階の一番奥の部屋
時々、私も部屋に遊びに行く
「ほら美優、家に着いたよ
起きて!!」
「うーん」
タクシーの運賃を払い、千鳥足の美優を担いでタクシーを降りると江坂先輩がいた
「…先輩」
「ごめんね、美優俺が預かるから」
「江坂さん、美優と話して下さい
私も美優の話を聞いただけですけど、江坂さんの行動は酷いと思いました」
「分かってる…
全部俺がちゃんとしてないからって…
あとは俺からちゃんと話すから」
「よろしくお願いします」
私は美優を江坂先輩に預けて帰った
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