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第2章 弱い心
私の名前は、栗原 美優
年は30歳
恥ずかしながら5年ちょっと付き合っている彼氏がいる
彼と出会ったのは、私がこの会社に入社した時、有りがちなパターンでバカみたいと思うけど、研修担当で1ヶ月程付いてくれていた時の何気ない優しさに惹かれてしまった
彼の名前は、江原 大和
年は34歳
入社当時は大和には付き合っていた彼女がいた
だから私は自分の気持ちを抑え普通に接していた
入社してから半年後、会社の飲み会でたまたま大和の隣に座った私はその言葉を聞いて抑えていた気持ちが爆発する
「彼女と別れてさぁ、俺って女と付き合う資格がないのかなぁって…」
「じゃあ、私彼女になりたい!!」
酔った勢いで言ったけど即撃沈…
「今は一人でいたい」
「………分かりました………」
そこから猛アタックの開始
「江原先輩、好きです
付き合って頂けませんか?」
「ごめん、仕事仲間でしか考えていない
それに付き合うって言う事も考えてない」
「そうですか…
でも私、諦めませんから」
それの繰り返しで、2年頑張って大和はOKを出してくれた
付き合って分かった事
私から誘う
私が店とか決める
全部決めるのは私…
でも大和が好きだから全部私が決めるのも何も文句も言わなかったし、いいやって思ってた
だけど限界が来てつい最近、大和の部屋でワザと別れを切り出した時の言葉がショックだった
そこから今に至って険悪ムードでいる
「大和…私達別れよっか」
「美優が別れたいって言うんだったら別れてもいいよ」
「……全部、私か……
決めるのは全部私
私は大和が好きなのに、大和は何も言ってくれないから私だけが浮かれてる感じで嫌だ!!」
「…はぁ…」
「ねぇ、それ溜息?
私の話に呆れてんの?」
「溜息じゃねーよ、第一お前が別れよっかって言ったから別れてもいいよって言っただけじゃねーか」
「大和がそんな考えでいるから前の彼女とも別れたんじゃないの!!」
私は大和の部屋を勢いよく出で、外で思いっきり泣いた
もう私も29歳、そしてあと数ヶ月で30歳になるって時に母親から電話が掛かってくる
「もしもし、美優ちゃん
元気しとる?」
「うん、元気でやってるよ」
「今日ね、野菜と米送ったから」
「あー、ありがとう」
「それとお見合い写真も一緒に送ったから、いいと思ったら返事ちょうだい」
「え!?何!?」
「じゃあ、返事待ってるから」
「え?お母さん…」
電話が切れて、勝手にホーム画面に変わるスマホををしばらく見ながら独り言を言う
「私ヤバイところまで来たのかなぁ…」
すると、大和からラインが来た
『この前はごめん、俺が悪かった
話がしたい』
ちょっとビックリした
何故なら大和から話がしたいって今まで無かったからだ
でも今はそんな気分では無かった
『今は話もしたくない』
と返し、そのまま寝てしまった
朝、起きて会社に行く準備をする
今日も大和と一緒に仕事をしなければならない
まぁ、これも覚悟の上だった事…
朝、エレベーターホールで大和と会う
「おはよ」
「おはようございます」
「後で話がしたいから時間取ってくれないか?」
「仕事が忙しいので時間は取れません」
大和に厳しくあたってしまう
それからは上司、部下の関係で日々過ごしていた
実家からの荷物の中に例のお見合い写真が入っていた
写真を見ると、顔もそこそこカッコいい
会うだけでもいいかなぁ…と思ってしまった
だけどこれでは行けないと思い始めて、月末月初は忙しいから大和も徹夜作業が続いてて、大和の家行ってサプライズでご馳走でも作ろうと合鍵で家に入った時、玄関に女性の靴があった
そーっと中に入るとリビングには誰もいなくて、寝室を開けると大和と知らない女性が一緒に寝ていた
私はショックで持ってきた荷物を落としてしまう
そして、その音をキッカケに大和と女性が起きる
「……美優?」
「あ、ごめん
起こした?
もう私、帰るから
お邪魔しました」
「待て!
これは違う
ちょ…お前何してんだ!!」
私は何も言い出せなくて…
また大和の家を出てから泣いてしまった
もう完全に私だけが好きで大和は私の事なんか好きでも何でも無かったんだと確信した…
自分の家に帰ってもずっと泣いていた
翌日案の定、目が凄い事に…
そう言えば今日新しい人が入ってくるから早く出社しないと行けない
急いで支度して通勤
エレベーターホールで待っているとまたも出くわす
「おはよ」
「おはようございます」
「昨日の事なんだけど…
あれ違うから」
「何の事でしょう?」
「美優、お願いだから話を……」
「貴方の話を聞くのは絶対的なんですね」
「……ごめん」
「今は上司と部下の関係です
それ以外の話はお断りします」
もう限界だった…
でも今日は新しい営業部長が来る
色々手続きをしないと行けないし、大変だ
そして約束の時間に迎えに行き、フロアを案内する
すると社内の女子達が押し寄せてきて大変…
人混みを掻き分けて、同期の結奈のデスクに向かう
結奈はキャーキャー言う女子とは違う
ちょっと天然だけど、落ち着いていて仕事も出来て相談もお互いにする仲
どうやら結奈と営業部長の方は知り合いっぽく思えた
何故ならいきなり初日から下の名前で呼び捨てで言うなんて…
あんなイケメンに言われたら周りの女子達はイチコロの筈だけど、結奈はよく分からない
午後からも営業部長にパシリ的に使われてたし、今日も結奈は残業決定かな?
仕事が終わり、一旦廊下に出て親に連絡する
「お母さん、荷物届いた
私、見合いするわ」
「本当?
嬉しいわ
いつが都合がいい?」
「来週の土日」
「分かった
じゃあ、調整しとくね」
「うん、よろしく」
もう、見合い決定 = 大和との別れ決定だ
電話を切り、仕事場に戻る
就業時間過ぎても残業している結奈に話し掛ける
もう飲みたくて仕方無かった
結奈は残業があるのにも関わらず、私の話を聞いてくれる時間を作ってくれた
有難い…
休憩室でコーヒーを飲みながら結奈を待つ
すると知らない番号から電話が掛かってくる
普通は知らない番号なんて出ないが、何故か気になったので出てみる
「……もしもし」
「あ、栗原さんですか?」
「…そうですけど」
「いきなりすみません、写真見てもらったと思うんですけど僕、上村 裕太って言います
お母様から直接電話してくれないかって言われまして電話しました
いきなりすみません」
「あ、そうだったんですね
ごめんなさい、うちの母が…」
「いえいえ、来週末が予定空いてるって聞いたんですけど」
「はい、実家に帰ろうと思って」
「あ、そんな事言ってましたね
でも僕がそちらに行きますので大丈夫ですよ
どこで待ち合わせします?」
「では、渋谷で」
「分かりました
楽しみにしてます」
「こちらこそ、ご連絡有難うございます」
電話を切ると、後ろから男性の声で話し掛けられた
「なんか楽しそうに話してたな」
振り返ると大和がいた
「…何ですか?
盗み聞きですか?」
「あんなに楽しそうに話してる美優、久し振りに見たなぁーと思って」
「…大和には私が誰と話しても関係ない
だって大和は仕方無く私と付き合ってたって分かったから今度は私から離れて行かないと
私が好きなだけではやって行けられない
もう疲れた
もう私に仕事以外話し掛けないで…」
「………そう思ってたのか……
分かった
ごめんな…」
そう言って大和は休憩室を出て行く
もう泣くを通り越して笑いしか出なくなった
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