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小さな雪が、花びらのようにひらひらと舞い落ちる12月の25日。場所は都内某所。
イルミネーションのようにきらきらと煌めく街灯と、クリスマスムードで浮き立つ通りすがりの人々を眺めながら、俺は待ち合わせ場所へと急いだ。
果たして彼女は来てくれているだろうか。
期待と不安が心中を行き交う中、しばらく歩いていると、あっという間に目的地へとたどり着いた。
「あっ・・・」
とある商業施設の中にある噴水広場。その噴水の縁に目的の人物は座っていた。彼女は詰まらなさそうにスマホをタップしている。
「やぁ、来てくれたんだね」
俺がそう言うと、彼女はスマホに向けていた鋭い視線を、こちらにスライドさせた。
「別に。友達を待ってるだけだから。あなたを待ってたわけじゃないし」
怒気のようなものを孕んだ声で彼女はそう告げる。
彼女は本来、誰かをこんな冷たくあしらうような子ではない。もっと優しくて暖かい。春の陽気のような存在だ。
では何故、現在このようになってるか。
恥ずかしい話ではあるのだが、その原因は喧嘩だ。
数日前に些細な事で口論になり、それからしばらく仲違いをしていたのだが今日、ようやくこうやって会って話すことができたというわけだ。
「この前はごめん。まだ怒ってる?」
「はっ?何の話?アンタが話しかけてさえこなけらば、こんなに怒らなくて済むんだけど」
どうやら、そうとうお冠の様子。これではまだ、まともに話せそうにない。なら、仕方ない。
俺は手に持っていた丁寧に包装されている箱を、彼女に差し出した。
「せめて、これだけは受け取って」
「はっ?何これ」
「今日ってクリスマスだろ?だからさ。プレゼント」
困惑した表情で首を傾げる彼女に、差し出したプレゼントを押し付ける。そして踵を返すと俺はその場を後にした。
きっと、このプレゼントなら、喜んでくれると信じて。
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