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軒下で寝る、へんな星の色。
洗面所でアイロンに集中していて、リビングにいるはずの長男への注意がふっと消えてしまった。気配が消えるほどに静かな時は、彼は絶対に良からぬことをやっている。見に行かねばという気持ちと、見るのが怖いという気持ちを両方抱えてリビングに行くと、彼は黒い画用紙に穴を開けるのに熱中していた。
「何してるの?」
「お空だよ」
この夏、初めてサマーキャンプに行ったときの夜空のことだな、とすぐにピンと来た。同じ幼稚園の子も何人かはいたけれど、家族が帯同しないでほとんど丸一日過ごした経験は、冬になった今もときどき彼の頭を占拠するらしい。画用紙をよく見ると、切れ目がないところにうまく穴を開けて星型にくりぬいている。いつの間にこんなことを覚えたのだろう。せっかくなので、裏からセロファンを貼った。
「外に出て、お日様にかざしてみようか」
軒先に出て画用紙を掲げて立つと、コンクリートのポーチに色とりどりの影ができた。息子は目を瞑っている。彼の心は、今キャンプのテントの中だ。
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