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鷹望様 Happy Birthday!!
シーントーク:(出演:鷹望様・未沙・未汝・架名・りな・綾)
場面設定:会議室
架名が鍛錬に出ている間、りなに呼び出された未沙、未汝、綾は会議室に集まり、それぞれ思い思いの席についた。
議長はどうやら、りなのようである。
りな「ということで、鷹望さんのお誕生日です」
未沙「それはおめでたいわね!! 何かお祝いを用意しましょ!!」
両手を胸の前で合わせて微笑む乗り気な未沙に目を向けながら、綾が記憶の引き出しを引っ張り出して言う。
綾「確か、架名兄さんをいじめるのが好物だったよな」
りな「綾・・・もう少しオブラートに包んで発言して下さいね。ある筋からの情報によると、兄さんが困っているのと、落ち込む姿をご覧になるのがお好きなようなんですよ」
未汝「なんだ。じゃ、架名ちゃんを落ち込ませればいいんじゃない? この間みたいに」
未沙「私がまたフればいいのかしら?」
りな「それはこの間やった所なので、今回は外しましょう」
未汝「じゃ、どうするの?」
どうせ案あるんでしょ? と言わんばかりに問うと、りなは未汝に目を向けた。
りな「そのアイディアを出して下さい」
未汝「りなちゃん、考えてくれてるわけじゃないんだ?」
そういった策略は完璧に計画立ててくるだろうりななので、案がない、というのには少々驚く。
りな「何か仰いましたか? 未汝姫」
未汝「なんでもないよ、空耳じゃない?」
冷や汗を掻きながら、鼻歌でも歌うかのように誤魔化した未汝をくすりと笑って、未沙が脳裏に浮かんだものを口にする。
未沙「そうねぇ、今年の歌会始のお勅題は「望」だったわよ?」
未汝「鷹望えもんさんといえば、(3973コメの憂さんのお言葉を借りると)二次元ポケットを持つ優秀な猫型ロボットの着ぐるみみたいだけど」
鷹望「う~ん、ケーキ欲しいなぁ」
ひょこりと現れた鷹望さんを見つけて、りなが目を丸くして凝視していると、綾は気が付かない様子でそのまま話を進めた。
綾「あぁそうか・・・バースデーケーキ、焼かなきゃな。ショートケーキかフルーツタルトかチョコレートか・・・」
鷹望「架名くんの嫌いなものって、なぁに?」
未沙「架名の嫌いなもの・・・? トマトとニンジンとピーマンと、あと芋虫・・・だったかしら?」
鷹望「じゃあ、トマトとニンジンとピーマンのたっぷり入った野菜ケーキを所望するぞよ」
綾「ああ、成程。それは良いアイディア・・・・・・」
言いながら、何かおかしいと気が付いた綾が、そっと声のした方に目を向ける。
綾「えっと・・・鷹望さん、いつからここに?」
りな「さっき未汝姫が、 ” 二次元ポケットを持つ優秀な猫型ロボットの着ぐるみ ” と口にした時にいらっしゃいましたよ」
鷹望「オイラを呼んだ声が聞こえたから、遊びに来てみた。面白いこと話してるなと思って」
その言葉に、りながくすりと笑って肩をすくめる。
りな「ご本人にバレてしまってはしょうがないですね。綾」
綾「ああ、すぐ作ってくる」
数時間後。
鍛錬に出ていた架名を呼び出して、食卓を囲む。架名の座席は、鷹望さんの横に指定されていた。
テーブルに置かれているのは色とりどりのケーキと、シャンパングラスに注がれた好き好きの飲み物だ。傍には普通のグラスも置かれ、水差しも用意されている。
そしてロウソクを立ててあるのは、可愛らしいフルーツケーキだ。
一同「鷹望さん、お誕生日おめでと~!!」
鷹望「ありがとー!!」
ふっとロウソクの火を吹き消すと、室内が暗くなった。綾が電気をつけながら、その手に四角いケーキ箱を持ち鷹望さんの傍までやってくると、そっとその箱を差し出す。
綾「ご所望のプレゼントです」
鷹望「ありがと、綾くん」
るんるんと箱を受け取って中身を出す。見た目は変哲もないパウンドケーキだ。
架名「ケーキ? 綾、いくら何でも・・・」
テーブルの上に様々な種類のケーキが並んでいるのに、どうしてまた? それも見た目は全く華やかでないケーキなのかと首を傾げていると、綾が鷹望さんにフォークを差し出した。鷹望さんはそれを受け取ってケーキを一口サイズに切ると、隣に座る架名に向けて差し出す。
鷹望「はい架名くん、あ~んして」
架名「は? え・・・ちょっ、鷹望さん、それは・・・」
鷹望「大丈夫。未沙姫ちゃんには承諾取ってあるから」
架名「承諾!? え・・・」
未沙「ええ。ちゃんとお伺いしているから大丈夫よ、架名? 私、妬いたりしないわ」
そう言ってニッコリ笑う未沙に、架名は本能的な危機を察知した。
架名「未沙姫、何か企んでます?」
未沙「ううん? 企んでなんて。ほら架名、お待たせしては申し訳ないわよ?」
未沙の微笑みを見ながら何か不穏なものを感じながらも、架名は仕方なくそのケーキの乗ったフォークにパクついた。
架名「っ!!!!?(み、水・・・っ)」
口を押さえて、そこにおいてあったハズの水差しに手を伸ばすが、何故か空を掴んだ。
え? と驚いて目を向ければ、丸い水差しの底を象った水滴のみ姿を残して、肝心の本体は行方不明になっている。鋭く目を走らせれば、りなが素知らぬ顔をして水差しをその手に抱えていた。
じゃあ、とシャンパングラスに目を向ければ、それは未沙がそっと自らの手元に引き寄せて、少々困った顔をして微笑んでいる。
鷹望「どうしたの? 架名くん?」
こくりと必死に飲み込んだ架名は、これが陰謀だったことに気が付く。
架名「鷹望さん、俺の味方じゃないの・・・?」
鷹望「味方? 何それ美味しいの(*⁰▿⁰*)?」(3779コメ引用)
美味しいのって・・・と思わぬ反撃を食らった架名は、綾に矛先を向けた。
架名「・・・・・・綾、少なくともお前、この計画に加担してるよな」
綾「鷹望さんたってのご希望だったし。今日の主役の希望は叶えるべきだろ?」
架名「こういう時だけ、そんな正論・・・・・・」
鷹望「だって、架名くんの好き嫌いが酷いって聞いちゃあ黙ってられないぜぇい? 好き嫌いすると成長できないんだから、メッだぞ!」(3758コメ引用)
架名「いえ、平均身長越したから、もういぃ・・・・・・」
りな「・・・頭の成長に栄養が必要では?」
架名「り・・・・・・」
「りな、お前はっっ」と言いかける架名に、鷹望さんは再び手元の野菜ケーキを一口サイズに切ってフォークに刺す。
鷹望「ほら架名くん、まだあるよ? 食べさせてあげるから、あ~んして?」
架名「いや、俺もうそれ、いらな・・・・・・」
鷹望「ほら、あ~ん」
冷や汗をたらたらと掻く架名に、鷹望さんはニッコリ笑って野菜ケーキを先端に装着させたフォークを架名の口元へと向ける。
綾「架名兄さん、諦めろ」
肩を震わせて笑いを堪えながら、架名の肩をポンっと叩く綾をキッと睨めつけた逃げ腰な架名はしかし、その後鷹望さんの甘い「あ~ん」攻撃からは逃れることができず、泣く泣く3口は食べさせられたのだった。
そして架名のトマトとニンジンとピーマン嫌いは、更に加速しましたとさ。
めでたしめでたし。
架名「めでたいのか!?」
鷹望「Sえもんはご満悦であるぞ( ̄∇ ̄)ほっほ」(3758コメ引用)
Fin.
(2020年1月18日)
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