St.Evilnight Saga ~ハロウィンの詐欺的奇跡~

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St.Evilnight Saga ~ハロウィンの詐欺的奇跡~

 Trick or Treat!!  子供達が仮装をして、教会へやってくる。  思い思いの衣装はバラエティに富んではいるが、その格好は皆、魔物だ。 「ポラード神父様、Trick or Treat!!」 「Happy Halloween. いたずらは勘弁して欲しいので、もてなしますよ」  買って来た時のまま、箱に入れっぱなしの菓子を祭壇の上に置き、面倒臭いと目で語りながら、作った笑顔を顔面に貼り付けていた。  ―― 下僕、せめて(かご)に移すくらいのこと、したらどうなの?  信徒(しんと)席の(すみ)に腰かけてその様子を眺めていると、魔女の格好をした女の子が一人、トテトテとやってきた。 「お姉ちゃんはハロウィンしないの?」 「私が?」 「お菓子を貰いに来たんでしょう? お姉ちゃんなら、ヴァンパイアとか似合いそうなのに」  ―― 仮装なんかしなくても、本物よ、私。あの下僕もね。  心の中でうっそりと笑うと、下僕が「その子を毒牙にかけないで下さいね」と言わんばかりの視線を送ってくる。 「あ!! でも神父様は魔物退治専門の人だってお母さんが言ってたから、あんまり本物っぽいと退治されちゃうのかな?」  う~んと悩む少女を見て、私は微笑みながら少女の首筋に手を伸ばす。 「そうね。それなら、退治される前に神父様の首筋に牙を立てようかしら?」  少女の首筋を、人差し指で()でた。  温かく、柔らかくて美味しそうな生命(いのち)がそこにある。 「お姉ちゃんが? でもお母さんが、ポラード神父様はロクデナシだけど、魔物退治させたらとっても強いそうよって言ってたけど……」  少女が心配そうな目を私に向ける。  そうね。一度あの下僕に退治された私は、その強さを身を持って知っているわ。だからこそ、ポラード神父を殺して下僕にしたのよ。 「高杜さん。この子に何を吹き込んでいるのか知りませんが、ダメですよ。手を出したりしたら」 「別に、何も吹き込んでないわ。お嬢ちゃん。心配しなくても、私はこの神父様に負けたりしないから大丈夫よ」  微笑むと、少女はきょとんとしてから無邪気に笑った。 「そっか。神父様、このお姉ちゃんの色仕掛(いろじか)けに負けちゃったのね」  色仕掛けなんて下僕にしたことはないけれど、どうやら子供の目から見ても下僕は真っ当な神父には見えないらしい。 「神父はそんなものに引っかかりませんよ。それに、高杜さんに色仕掛けは無理です」 「何でよ」 「ご自分の普段の行動を、胸に手を当てて考えてみて下さい。さて、そろそろ日も落ちてきましたから、気をつけて帰って下さいね」  そう言って少女を帰すと、下僕は明日の準備があるからと嫌そうな顔をしながら仕事に戻っていった。
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