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【天国へ誘う本】
自分の意思とは、裏腹にいつの間にかその一冊に
手を伸ばしパラパラと中身を確認していた。
一瞬しか見えない1ページ、1ページを
捲る度に、何故かやるせない気持ちを
和らげてくれている気がした。
そして何処か懐かしくも優しい気持ちが溢れてきたのだ。
そして僕は、その本を持ってレジに立っていた。
レジスタッフの女性が、その1冊にブックカバーをかけるか聞いてきたので
ふと我に返った僕は、大丈夫です。と声をかけた。
気づくと女性は、レジ袋に入れたその本を僕の前に出して
ありがとうございました。と言った後
意味深に、一言僕にこう言った。
「この1冊は、貴方の人生を左右します。」
僕は、その一言に女性を見返したが、
慌てて買い物を済ませようと走ってきた男性のレジ対応をし始めた。
仕方なくショッピングモールを後にし
自宅へ帰り適当に晩御飯を済ませ、
携帯から動画サイトを除く。
これもまたいつもの日課では、在るものの。
そう言う日に限ってお気に入りの投稿者が、動画を上げていなかったり、つまらない動画や、前に見た動画ばかりが、トップを飾る。
動画サイトを閉じ、ベッドに横になる。
早めに寝ようとするも、目を閉じても中々寝付けず
時間が過ぎるばかり。
そうだ、さっき買った本でも読もうと思い
レジ袋から取り出して、表紙を改めて確認し、
1ページめくる。
ちゃんと見ていなかったからか。
本の中身は、白紙と途切れ途切れに移された風景の写真集だった。
さっきは、何に感動したのだろうか。
あの衝動が、嘘の様に感じた。
馬鹿らしく想えた。
本を閉じ、瞳を閉じる。
1日の最後の時間が、何故こんなにも寂しい気持ちで終わりになるのか。
自分の頭では全く理解出来なかった。
思い起こせばいつからだ。
学生の頃や、社会人になった頃は、まだ『明日』と言う物に希望を抱いていたはずなのに。
目を閉じていても、頭を駆け巡る思い出や体験が浮かび上がり
また胸を締め付けられる思いになった。
中々寝付けない。
もうすぐ1時間が経つのではないか。
思想の中に微かに、見覚えの在る風景が写り込んだ。
此処は、何処だ?
その景色は一瞬で消えさり、またふとした瞬間頭に浮かぶ。
今度は、綺麗な夕陽。
これは確か。
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