天国へ誘う本

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それは、先程見た。 あの夕焼けが綺麗な登下校の駅の写真。 そこに移る思い出せない面影。 心のモヤモヤが取れない。 それは孤独感でも、寂しさでもなかった。 確かめたい。出来る限り早くこの気持ちを晴らしたい。 そう想い僕は、本の1ページ、1ページを集中し(めく)った。 するとある事に気づいた。 空白のページと、そうでないページ。 その風景が描かれたページは、何処か見覚えがある。 何故かは、思い出せない。 けれどどれもこれも、自分が知っている場所。 確かここも。 そしてまた気づくと、その風景の中に入り込んでいた。 今度は、同級生達とよく溜まっていた何年か前に潰れたスーパーの前。 懐かしい。 ここでよく友達と他愛もない話をして、大好きなお菓子と炭酸を買って そのまま友達の家まで遊びに行ったんだっけ。 懐かしんでいると、今度はスーパーからまた人影が出てきた。 今度は、2人。 今度もまたはっきりと見えず(もや)の様な物で、ぼやけて見える。 しかし様子がおかしい。 一人が、怒鳴っている様に見える。 いや、待て。確かこの光景。身に覚えがある。 あれは。 思い出そうとするとまたパッと目が覚めた。 何故だ。あの場所も、あの2人も見に覚えがある。 またも本を捲りページを1ページ、1ページ確認していくと 先程見たスーパーの景色が追加されている。 まさか、この本は、僕の記憶? いや、そんなはずはない。有り得ない。
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