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ぼくは一階のリビングに向かった。さてさて、今年の年賀状の成果はと…… いつもであればリビングのテーブルに置いてあるはずの年賀状が一枚たりともないのだ、メールやSNSで済まそうと友人内で約束はしてない。あれ? ぼくが友達と思ってるのは一方通行な考えで、あちらからは何とも思われてなかったのかな?
「母さん? ぼくの年賀状は?」
母はぼくの問いに答えずに台所で朝食の調理をしている。そう言えば今年はお節も雑煮用の餅も作ってる気配が無い。年越しそばすらも食べていない。大晦日の夜にそれらしいことすらしていないのだ。たまにはこんな感じもいいかなと思い、ぼくは特に何も言わなかったが、流石に元旦の朝が平日と変わりないのは流石におかしい。
いつもの元旦ならば年賀状の整理をしているはずの父もテーブルに座り、無表情でテレビを眺めている。テレビから白黒映像のダイヤモンド富士の映像に春の海を乗せたものがエンドレスリピートで流れている、母がいつもと変わりない食事をテーブルの上に乗せたところで新年の挨拶が行われた。
「あけましておめでとうございます。今年も宜しくおねがいします」
ぼくはペコリと頭を下げて新年の挨拶を行った。ところが両親は無表情であった。全く、新年早々辛気臭い顔なんてしないでくれよ、こっちまで辛気臭くなるじゃないか。
「今年も、宜しくお願いします」
「昨年は世話になった。今年も宜しく頼む」
年が開けたばかりだと言うのに暗い両親だ。ぼくはやれやれと言った感じに首を落とした。
すると、違和感に気がついた。
「ねぇ? ニエベはどこに行ったの? 今朝から見ないけど」
ニエベと言うのは、ぼくの家で飼っている犬だ。犬種はサモエドで、ぼくが小さい時に家にやってきた。ぼくにとっては一蓮托生の双子と言ってもいい。
そのニエベの姿が今朝から見当たらない。飼い始めた時はぼくの膝ほどしかなかったのに、いつの間にやら体高ではぼくの腰ぐらいの高さになり、二本脚で立てば、ぼくの身長を超えるぐらいだ。こんな犬を庭で鎖に繋がずに室内飼いの座敷犬にしているんだから家の中にいればそれなりに気配の一つや二つするはずだ、だが、家の中にいる気配が一切ない。そもそも、ニエベの塒はぼくの部屋だ。それなのに今日はなぜにぼくの部屋にいないのだろうか。
ぼくの質問に両親は答えなかった。今日はなにかがおかしい、目の前が白い上に、両親もなにか様子が変だ。父は延々とテレビを眺め、母は掃除機の爆音を鳴らし、廊下に散らばったニエベの毛を吸っていた。お年玉は貰える気配がない、ぼくはなにか怒らせることをしたのだろうか。陰鬱な正月を過ごしていると、インターホンが鳴った。
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