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 松本聖子は、平成十二年一月十三日に都内H市に生まれる。聖子が五歳の時に当時四十台だった父親を突然の(やまい)で亡くし、それ以降は母親との二人暮らしになった。  病弱だった母親は、父親の死亡保険金二千万円を取り崩しながら聖子を育てていたが、病弱な母親の医療費によって、保険金は聖子が中学を卒業する頃には使い果たされていたという。  中学卒業後働くと言う聖子を説得し、地元の公立高校に通わせたのは母親の望みだった。  中学の頃から、家庭的に困窮していた聖子は虐めを受けていたという。生活苦から髪を自分で切り、身だしなみに掛ける余裕などもなく、入浴の回数も出来るだけ少なくして生活費を切り詰めていた。  そんな聖子に、子供たちは自分たちとは違う感覚を敏感に感じとっていたのだろう。元々容姿のよかった聖子ではあったが、生活の苦しさが彼女の性格を暗く地味にしていったようだ。いつも洗いざらしの制服を着て髪はだらしなく、身だしなみにも気を使っていない彼女は、回りの子供たちからすれば異質な存在であったろう。陰湿な虐めに遭っていても、表情一つ変えず級友の行為を告発もしない。学校も一日たりとも休まなかった。そんな聖子の態度に、担任教師は虐めに気が付かなかったという。
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