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 裁判は、被告本人が殺害実行の意思を認めているため、弁護側のできる対応は被告人の心神耗弱状態と裁判官の情状酌量を求めるだけであった。資産もなく、親戚もいない被告人を見守るのは、彼女に好奇の目を向ける人たちか、彼女の人気にあやかろうとする売名目的の者たちのように思われた。それに被告人も気付いていたのであろう、彼女は支援の手を断り、国選弁護人に全てを任せた。  私は取り調べの頃から、被告人の潔癖とさえ言える、精神の清らかさを感じていた。端的に言い表すならば、純粋なのだ。
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