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 事件は発生直後からマスコミによってセンセーショナルに報じられた。事件の内容が明らかになるにつれ、一種異様な雰囲気を漂わせる本件は人々の関心を呼んでいった。新聞や雑誌テレビの報道番組には、『現代の阿部定』であるとか『天使の顔をした殺人者』『美しき殺人鬼』などといった心ない、事件をことさらに煽る見出しが並ぶようになった。報道によって流布された若干二十歳の、愛憎に狂った加害者の可憐な姿に、視聴者たちはあらぬ想像をし、彼女の容姿に妄想を掻き立てていったのである。  そして人々は、聖子のその容姿からかけ離れた、体格のよい中年男性教師の殺害(被害者は身長百七十五センチ、体重九十キロ、聖子は身長百五十五センチ体重五十キロである)と、二十歳近くも歳上の中年男性に対する劣情と(ただ)れた男女関係や、その周到な犯行手口とのギャップに興奮し、拘置所には連日見知らぬ人物からの手紙が送られてきていたという。その手紙全てに目を通した聖子は、一人ひとりに丁寧な返事を書き、その後長く文通を続けた人物もあったといわれる。
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