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『あんな奴、殺されて当然なんだ!』  ありきたりな、普通の事件であれば個人の、それも匿名の発言など民衆の声に飲み込まれ掻き消されてゆくものだろう。しかし、ことこの事件に限っては人々の好奇心がそれを許さなかった。マスコミの情報が出尽くし大衆の興味が()へ移ってからも、聖子に気を掛ける、一種のファンが一定数いたのである。被害者を誹謗した発言者に対し良識的な反論が送られると、それに対し聖子のファンを名乗る人物の反論が続いた。そして今度はそれを擁護するコメントと反論も続いていった。  興味深い発言にはユーザーの評価が付き拡散されてゆく、まとめサイトには時系列と論旨が分析され告発者の発言が抽出される。すると、事件に興味を持つ人たちが次々に拡散していった。SNSで盛り上がった話題はマスコミの目に触れると、次に紙媒体の記事に上り、社会全体に事件の話題が再び拡散されていったのだ。  記事を読んだ検事の顔色がみるみる変わった。告発者は発言で、報道規制によって伏せられていた、松本聖子の出身高校名を臭わせていたのだ。
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