墓場まで持ってはいくけれど

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 「本当は墓場まで持っていこうと思っていたことをこれからお前に話す。俺を罵倒するなり、何でもお前の好きにするといい。俺は何だろうが受け止める」  そんな重苦しい前置きの後、また沈黙。電話での長い沈黙というのは妙に不安を煽るものである。痺れをきらして俺が「なんだよ?」と聞き返すと、思いがけない言葉が返ってきた。 「実はお前には腹違いの妹がいる。今年大学へ入学したそうだ」  親より先に逝くのは最大の親不孝だというのなら俺はまさに最大の親不孝者なわけで、それと比べたら親父に隠し子がいたことくらい、何でもないのかもしれない。「墓場まで持っていこうと思っていたこと」を俺に告白してくるというのは、俺より自分の方が絶対早く死ぬと思っていたからというわけか。今年大学に入学しただって? よくまあそんなに長い間隠し通していたものだと、俺は怒りなど湧かずむしろ感心してしまった。  親父の話によると向こうさんはウチとは逆で、シングルマザーだったそうだ。お互い独身なのだから結婚すればよかったのに、思春期の俺のことを考えて結婚はしなかったという。父と向こうさんとの間にできた子は父が認知して生活費を援助していたそうだ。
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