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私の村の近くに、いつからあるかも分からない神殿があります。
そこには、いつでも神様が居られるそうです。
神様は、人の望む物を与えて下さいました。
雨も、お天道様も、豊作も。病も治して下さった。
でも、神様も無償でこんな事は出来ません。なので、人間達に対価をお望みになりました。
何でも良い、美しいものや素晴らしいものを私の神殿の中にある台座へ捧げてくれ……。
その村にある、古い巫女の家系の者が告げました。
それが、今から360年程前でしょうか。
村の長は、春と秋に、冬を無事に越させて下さりありがとうございます、木の実や稲穂を大量に実らせて下さりありがとうございます、と、見事に咲いた桜の枝や清流の水、紅葉や鈴虫などを台座に捧げます。
そうして、村の人達の生活は裕福なものになっていきます。
ある時、雨がピタリと止まってしまいました。
稲穂が成長する、夏。
ここで雨が止まってしまっては、成長しない。もしや、神様がここから離れて行ったのか。
村の新しい長は、大急ぎでひとまず村人全員に斎戒沐浴 をさせ、全員で神殿に行き、戻って来て下さいと頭を下げます。
しかし、何も起きません。
その時、村人の一人が行ったのです。
「生贄を捧げよう。」
と。
きっと、その人は歴史学者だったのでしょう。
ある文献にあったのです。
『森や神殿など、神が居座る場所が荒れると、神の力も弱まる。力を再起させるには、生贄が早いだろう。人の生を喰らえば、直ぐに力が戻る。だが……。』
文献自体はここで切れていたのですが、物は試し、と、村一番の美女を美しい着物を着せて美しい装飾品を着けさせる。
そして、神殿の奥に送り出した。そして、1日待ちました。
長が起きると、サァーーーと言う音がします。
窓を開けると、雨が降っています。村人達は喜び、神様に感謝しました。
それからと言うもの、よくない事が起こる度に人間を神殿に送り出し、神様に捧げて村人は平和に暮らしていました。
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