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その日、いつもより早めに帰宅した。
美衣とはまだ気まずいままだったけど、彼女の体のことが心配だったから。
朝から体調が悪そうにしていたから、てっきりバイトも休むと思っていたのに。
けど、美衣はそういう子だ。
他の人に迷惑が掛かるようなことはしなくて、体調不良だったとしても簡単に休むことはしない。
自分に任されたことをしっかりとこなそうとする、そういう意思の強さを持ってる。
だから、無理しすぎるんじゃないかって心配になったりするんだ、今日みたいに。
「ただいま」
返事はない。
靴を脱ぎ捨ててリビングに入ると、美衣はテーブルに突っ伏して寝ていた。
体調が悪いというのに、なにも無理して料理まで作ることないのに。
こんなところで寝たら、余計に悪化してひどくなるかもしれないのに。
「……美衣?」
呼んでも起きる気配はない。
躊躇いながらも額にそっと触れると、いつも体温が低めなのに今は熱かった。
どうやら熱が上がっているらしく、目を瞑りながらも少しだるそうだった。
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