I can feel it if you don't say.

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I can feel it if you don't say.

 宴もたけなわ。テーブルに置かれたビールのジョッキが、どれも凄い勢いで空になっていく。やっぱり久々の宴会だからか皆楽しそうだ。良かった良かった。  そんな様子をのんびり眺めていたら、隣に本日の主役がやってきた。 「よ、千尋。お疲れさん」 「お疲れ。やっぱ主役は引っ張りだこだな」  よせよ、と肩をどつかれる————そんな奴はにかみながらビールを飲み干した。 「改めて、結婚おめでとな」 「おう。つかお前から改まって言われるの超気持ち悪いな」 「うるせぇよ! 祝ってやってるだけいいと思え!」  そもそも、これはお前の結婚祝いだろうが、こん畜生! こいつとは同期だしそれなりに仲もいい。そんなよしみで、こちらはやりたくない幹事まで買って出たってのに。 「いや、でも本当ありがとうな」  あ、やっぱ前言撤回。これは気持ち悪い……というかなんか恥ずかしい。やめだ、やめ。飲みかけのイチゴサワーを一気に流し込む。 「おっ、島田じゃん、おめでとー」 「お幸せにな……とでもいうかと思ったか! リア充め! 末永く爆発しろぉ!」  そんな奴と話していたら、島田と仲のいい、澤田さんと木村が乱入してきた。……あぁ、木村もうできあがってんじゃねぇか! そんな2人につられてか、他の連中もぞろぞろとこちらに集まってくる。  祝いの言葉と共に次々と注がれていく酒、酒、酒。……島田、明日仕事来れないな、こりゃ。しばらく皆、というよりも酔っ払いの愉快な仲間たちと喋っていたら、不意に澤田さんがにやにやと笑いながら、島田に問いかけた。 「というかさ、プロポーズはどっちがしたの?」  あぁ、女子的にはそこ、気になるよな。 「え? ……そりゃ、もちろん、俺が、したよ」  おおー、という女性陣のどよめき。 「へぇー、お前もそういう時くらいは男気出すんだな」 「うるせぇ。余計なお世話だ。つか、そういうお前はどうなんだよ、千尋」 「俺は…………あ、そうだ。して、ないや」  はぁ? という各所からの声が俺に突き刺さる。 「何、お前よくそれで結婚できたな……」 「えぇ、マジ? じゃぁあの天歌さんがプロポーズしたの? え、女子にさせるのはちょっとないわー」 「うーわ、お前それであのナイスバディ美人社長と結婚したのかよ……ふざけんな、爆発しろ! 俺だって可愛くて巨乳で綺麗な社長さんと逆玉婚してぇわ!」 「いや、お前そもそも彼女いねぇだろ、木村!」  最後のは見過ごせない。というか……皆ひどくね? それともそんなに俺やばいことしたの? 「というかさ、千尋。まず何をもってあの社長と付き合うことになったんだ?」 「それは嫌って程、今まで言ってきたんだけど……」
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