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12 光の世界
クリエイター島を出てから……十五時間後。
ようやく、唯央は大輝と二人きりになれていた。
「想像以上以下でもないが……さすがに騒々しかったな」
やはり、疲労の色は隠せないでいる大輝に、唯央は正面から向き合った。静かに目を閉じ、今日の出来事を反芻する──
迎えに来たヘリコプターから降り、西王財閥本社ビルの屋上に立った時までは、大輝の隣に居られたが──そこから先は無理だった。
さすがの大輝も、「すまない」と、ひとこと言うと、幹部達と共に歩き去って行った。
唯央は、ひとまずはシャワーを浴びさせてもらい……用意されてあった高級タオルに感動していると、同じ部署のα達が押しかけてきた。
無事を確認、祝われるよりも先に、生配信中の会見を視聴させられた。
大輝は真っ白なシャツとスラックスに着替え、今回の騒動について、全てを話していた。
クリエイター島でヘリに乗り込む直前、本社ビルに降り立って歩いている数秒の映像が、時折、挟まれる。
いつの時も、どの瞬間、どの角度も、大輝は毅然として、美しかった。
逆に、自分が、よく見えない角度から映されているのが、唯央には気になった──自分、そんなに邪魔……?
「よかったな、唯央……あんまり判らない様に映してもらえて」
「このところずっと、唯央の顔画像とかが勝手にアップされまくっていて、僕達ががんばって、消しまくったんだよ。人生で初めて、仕事をした気分だ」
優雅なα達は相変わらず過ぎて──唯央は笑った。
……目を開けると、先程より少し力の抜けた、大輝の顔があった。
そして、静かに唇が動き──
「私は更迭されることになった。これから少し、ゆっくり出来そうだ」
と、言った。
「更迭……」
役職を解かれ、誰かが後任に就いたということだ。
大輝には、これからすることが山積で──多忙な職務との両立は難しい。
いままで通りの業務をするには、人目もつき過ぎて煩わしい。それならば……ということだ。
「大輝様の代わりは……夕輝様?」
「まさか」
ここだけの話、役員会にも夕輝は出ていない。役割が違うのだ。
「よかった……夕輝様がもし代わりになったら、夕輝様が壊れちゃう」
「それは、心配しているのか? それとも──」
「だって、夕輝様が輝ける場所は、本社じゃないから……」
「まぁ、そうだな」
とりあえず、今日のところは本社に宿泊することとなった。
すぐにでも本家に戻りたいところだが──あちらはあちらで人目があるし、いろいろと不都合だった。
明日の昼頃、二人で別宅に移動する手はずになっていると聞く。
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