12 光の世界

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 唯央の動き、その言葉、掌に当たる熱さ、裸体の温もりに──『あの時』以上の刺激を受けて、大輝のものは即座に勃ち上がった。 「……本当に、いいのか」  殺風景な医務室のベッドで、蛍光灯に照らされ──こんな場所で、もうすぐに、性交が始まる。  大輝の片方の指は、唯央の後ろの窄みにのび、簡単に飲み込まれていった。 「うぅ……」  少しだけ久しぶりに、何の潤滑もないまま異物を差し込まれた違和感はあった。唯央は、痛みのない角度に、自分から動いて調整した。  うまく──沈み込んで、大輝の指……中指と、人差し指、二本ほどを受け容れる。  大輝は不意に、初めて唯央を抱いた日のことを思い出した。  意を決し、風呂場にいる唯央を押し倒した。秘部を掻き分け、こんな風に、まずは指を押し込むと──まだ、夕輝のものにはなっていないとわかった。  その瞬間、自分だけのものに変えてやろう……と、思った、のだ。  それから、自分の部屋へ引きずり連れて行き、嫌がる唯央に自分のものを差し込んだ。  いやだ、どうして……と、泣く唯央だったが──そのうち、自分で体を動かし、角度を変え、うまく繋がった……。  最初の時から、体の相性は抜群によかった──唯央は、大輝が慣れているからだと思っている様子だったが、それだけではない。  第一、誰彼構わず抱くわけではないから、そんなに慣れてもいないと大輝は思っている。  こんな簡単に、深く繋がれる自分達だったら──そのうち、子供も出来るだろうと思った。  唯央はβだが、絵の才能がある優れた男だから、いい子供が生まれるだろう。別に、αでなくても、次の王になる者でなくても、いい。  自分の子供として、十分に愛せるだろうと──思ったのだった。 「……唯央。本当に、私の子供を生みたいのか」  あの時の──あの頃からの願いが、叶うかもしれないところに、いま、いる。  だが、それが現実になるということは──…    唯央の身体を変え、命を削らせる。長年の夢である、絵を描く時間も失われることになる。    それは、いいのか。それでもいいのか?  このままの体で、愛し、愛し続け、共に長く生きる方が幸せではないのか──… 「う、生みたい……です。本当に、生めるかどうかは、わからないけど……そうなりたいと願って、努力はしたい、です。それでも、もし、体が変わらなかったら──それでも、大輝様の傍にいて、いいなら……」  唯央の、思いと熱い体をぶつけられながら、大輝は自らを挿し入れてゆく。  言葉や頷きの代わりに、抱きしめることで、唯央に答える。   「……あぁ、大輝様──」  唯央は、満足そうに呻いた後……最奥まで、大輝を含んだ。熱く薄い粘膜越しに、彼の内臓が大きく動いているのがわかる。怖くなるほどだ。  そうしているうちに、大輝は──自分が唯央を支えているのか、唯央に包まれているのか……わからなくなっていた。  そして、やがて、意識が遠のいていった。  自分が受け容れているものは──なんと大きな光なのだろう。  あたたかくて……自分の体の隅々までが満たされてゆく……  これまで感じたことがない、初めてのものを受け取っている気持ちだ。  ──これが……母性の愛、というものか……?  母の愛情というものを、感じたことはない。  自分を生んだΩは、最高峰のαの妻である自分だけを愛していた。  そんな自分が生んだ息子は、優秀で当たり前だ。そんなものにわざわざ心を向けはしない。  大輝にとって、母親は、そういうものだった──。  
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