1 輝ける男

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 この様な日本の中で──Ωと出会うことが出来、婚姻できるのは、αだけ。  まして、当時の日本で五指に入ると賛辞されたΩから生まれ、家柄も経済界においても、文字通りの王である西王家の長男・大輝ならば、当然だった。 「貴方の子供など、とても……生めるわけがない」  本心から言ったあまり、唯央はぶっきらぼうに目を逸らした。  それが不興を買ったらしく、つい、と、顔を大輝の方へ向けさせられた。唯央は即座に、「申し訳ございません」の表情をする。  真正面から見る大輝は、息をのむ程に端正で、人間ではない様にさえ感じる。  肌もきめ細かく、鼻立ちや唇も整い、目元など、筆でスッと書いたみたいだ。だが、人形などではない証拠に、艶光りのする黒い瞳が、強く息づいている。  大輝が西王という姓──『武族』の中では、αのみが苗字を名乗れ、『王』の字を使えるのは最上位のαだけ。……βには苗字はない──に、相応しい品を持つのは、この美貌ゆえだけではない。  内面から現れる威圧感、発揮される能力……何もかもが完璧で、唯央は見ていられない程だった。……眩し過ぎて。  それなのに、正面から見ることを強要される。  自分は大輝によって、に、置かれてしまったから。  そしてそこでは、性的な奉仕ぐらいしか、できることはなかった。
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