彼女に言いたくて

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「おい、美姫ちゃん。そんな中二病のヤツを相手にすることなんてないって」 「そうそう。放っておけば?」  せっかく、憧れの美姫ちゃんが声をかけてくれた、この貴重な時間なのに。  同じ中学出身の悪友であるジュンイチが、リョウと一緒に、オレと美姫ちゃんのあいだに割りこんでくる。  オレと同じように美姫ちゃんに片想いをしているジュンイチ。  こいつはクセ者だ。  中学時代。学校からの帰宅途中で空を見上げながら「――はじまったか……」と、うっかりつぶやいたオレの言葉を、こいつは背後で聞いていやがった。  真冬に、ドアノブに手をかけたときにビリっときた静電気で、思わず「――ちっ! 結界か……」とオレがつぶやいた瞬間を、こいつに目撃されてしまった。  だから、オレの黒歴史を知っているこいつとは、別の高校に行きたかったのに。  残念ながら同じような成績であったために、一番近くの高校にそろって進学してしまった。 「え~。でも、高雅くん……。わたし、心配だもの」  心配げな表情の美姫ちゃんが、大きな瞳を潤ませた。  オレは無言で、ふいっと視線を逸らす。  だが、オレは心の中で、顔を両手で隠して叫びながら転げまわっていた。  ふおおおおおぉぉぉ! 可愛いじゃないか!  オレみたいなボッチでも、やさしい言葉をかけてくれる。  まるで天使! まさに天使!  ああ、好きと言いたい愛しているとブチまけたい!  でも、こんな自他ともに認める中二病のボッチ、フラれる未来しか見えてないから、とても口に出して言えない。  けれど、オレは美姫ちゃんのためなら、きっと死ねる。
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