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ジュンイチの野郎!
女の子を――美姫ちゃんを置いていきやがって!
追いかけてくる厳つい男たちを撒こうと、オレは美姫ちゃんと狭い路地に逃げこんだ。いくつかの角を細かく曲がる。
直線の道で振り切ることはできない。
だが、オレたちの姿を見失えばあきらめてくれるかもしれない。
「どこ行きやがった! ガキども、出てきやがれ!」
息を弾ませながら、オレたちは足が止まった。
男たちの声が、だんだん近づいてくる中で、オレと美姫ちゃんは辺りを見回し、電柱の陰にかがんで身をひそめる。
美姫ちゃんがガタガタ震えているのが、触れた腕からオレへ伝わってきた。
そんな中、絶望からだろうか、オレは妙に冷静になる。
――ここでオトコを見せずに、オレはいつ好きなオンナを護れるっていうんだ?
美姫ちゃんも、勇気をだしてオレに告白してくれたじゃないか。
オレは、憧れの美姫ちゃんのためなら死ねるって思ったじゃないか?
きっと、オレの気持ちを――いままで言えなかった言葉を伝えられたら、オレは覚悟を決められる。本当に、彼女のために犠牲となって死ねる。
言いたくて、でもずっと言えなかった言葉。
いまこそ、ここで彼女に言うんだ。
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