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理花と大智が門をくぐると木の上からふぅ~とため息が聞こえたので、見上げると大きな白い鳥が一つの卵を手にして困ったように首を傾げていた。
「こんにちは。大きな白い鳥さん。どうしたんですか?」
「こんにちは、私の名前は白鳥武美というの。お菓子作りのヒナが一匹孵らないのよ。何か方法はないかしら?えっと、あなたたちはどなたかしら?」
理花と大智が自己紹介をすると、白鳥さんが卵を一つ握って二人の下へと飛んできて、問題の卵を見せてくれた。
巣の上からは、既に孵ったひなたちの元気のいい鳴き声が聞こえるが、白鳥さんが地面に下した卵はぴくりとも動かない。
大智が卵の表面を注意深く観察するがひびも入っていないことが分かった。
「耳を当てると、がさごそ音はするので、もうしばらく温めて様子を見られた方がいいかもしれません」
大智が真面目に白鳥さんに説明している横で、理花は「お~い」と呼びかけながら卵をコンコンとノックしている。
白鳥さんはとってもおおらかで明るい鳥さんらしく、理花のノックに合わせてさえずり出した。
すると、卵の中から、こんこんとノックを返す音がする。
「あっ、お返事してる。大智君も聞いてて」
コンコン。こんこん。
コンコ・コンコン。こんここんこん
大智が、少しリズムが違うと笑うと、中からもう一度こんこ・こんこんとノックの音が聞こえた。
「合ってる、合ってる。すごい。ねぇ、外に出て続きをやらない?」
理花が誘いかけると、卵が大きく揺れ出した。
こんこ・こんこん。こんこ・こんこん こんこ・こんこん リズムを取りながら、必死で殻を割っているらしい。
「がんばれ~~~~!」
白鳥さんと一緒に、理花と大智が声を合わせて応援すると、ピキッと卵にひびが入った。
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