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「私にもうっくんが服を着ているように見え…あっ、うっくん、アリの巣の入り口を踏んじゃだめだよ」
理花が注意をしている間に、うっくんは、アリがたむろする巣穴に向かってまるでダイブするように飛びかり、理花が慌ててうっくんを抱き留めようとしたとき、なんと巣穴が広がって、うっくんはその中に入ってしまった。
巣穴がボンッと開く衝撃で、しりもちをついてしまった理花と男の子は、慌てて起き上がり、巣穴を覗き込んだが、縦に深く続いている下の方は暗くてよく見えない。
「僕、先生を呼んでくる。こんな大きな穴に誰か落ちたら大変だもの。理花っちゃんは、誰も近づかないように見張っていてね」
「うん。分かった。ロープがあったらうっくんを助けるために持ってきてね」
男の子は頷いてから、校舎の方に駆けていった。
その後ろ姿を見送った後、危ないと分かっていても、理花は好奇心を捨てきれず、また、穴の中を覗き込んだ。
「どうして地下水が出てこないのかな?こんなに深かったら水が上がってきてもいいはずなのに」
「何してるの?その穴に何かいるの?」
突然背中から声をかけられて驚いた理花は、アリ巣のへりにかけていた手を滑らせ、穴の中に真っ逆さま……。
「危ない!掴まって!」
急降下すると思ったら、アリ巣の中は、重力があまり働いていないらしく、ゆっくりと降りると分かった理花は、身体を捻り、伸ばされた男の子の手を掴んだ。
「うわぁ~っ。身体が引きずり込まれる!」
その途端、男の子の身体が浮いて、理花と共にアリ巣の中に落ちてしまい、二人はゆっくりと竪穴をエレベーターに乗っているように降りていった。
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