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降りながら、上を見ると、今まで開いていた入り口がふさがっていくのが見える。無駄な抵抗と知りながら、理花は平泳ぎをするように上に登ろうともがいてみたが、上昇せず、希望の光は穴が閉じるとともに小さくなり、ろうそくが吹き消されたように、辺りは真っ暗になってしまった。
どこまで降りるのだろうと、不安になった時、男の子が理花に話しかけてきた。
「黙っていると闇に飲み込まれそうだね。俺、瀬尾大智っていうんだ。君は?」
「あ、青木理花。声、すごく響くね。灯りがあるといいんだけれど、怖いわ」
理花が灯りと言った途端に、壁のあちこちが発光し、アリ巣の中が明るくなったので、二人はびっくりして顔を見合わせた。
「希望を言えば願いが叶うのかもしれないな。上に登りたい。外に出たい」
大智の言葉の後に、起きることを期待して、二人は握ったままだった手を、どっちかが置いていかれないように、もっとしっかりと握りあったが、身体は上昇するどころか、地面に確かな感覚を覚え、二人は地底に着いたことを知った。
すぐ目の前に大きな入り口が見えたので、二人が恐る恐る覗いてみると、驚くべきことに、木々がたくさん生えていて、まるで森のようになっている。道が3本に別れている分岐点に誰かがいるのが目に留まり、二人はそこへ駆けていった。
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