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トンネルを抜けると、そこは花国だった。
理花はここがアリ巣だということをすっかり忘れてしまうほど、目の前に広がる色とりどりの花畑にうっとりとしてしまった。
「うわぁ~っ。何てきれい!大智君。私、ここにずっといたい!」
「だめだよ理花ちゃん。帰らないとみんなが心配するよ。あっ、ほら、見て!あそこに人がいる」
「ほんとだ。お花の妖精さんみたい。あの人に出口を聞いてみよう」
理花と大智は花畑の中の小道を進みながら、バラを抱えている女性の元へと近づいていき、理花がそっと声をかけた。
「あの、すみません。私、理花といいます。アリ巣に落っこちてしまって帰る道を探しているのですが、地上に出る道を教えていただけませんか?」
「こんにちは。理花ちゃん。私は花畑を管理している夢 餡子です。お二人の話し声が聞こえましたが、私は妖精ではありません。このコスチュームは、夢彩を紡いだストーリーをお花に話して聞かせ、ストーリーごとに美しい花を咲かせるようにと願いをこめて着るものなのです」
大智君はぼ~っと見とれてしまって、言葉も出ないようだ。理花はなぜかちょっとむしゃくしゃして、肘で大智君を突っついてやると、大智君はハッと我に返ったようにしゃきんと背を伸ばした。
「あっ、俺は大智です。新種の花を作る心意気がよく分かりました。あの…この花は育てたあと、どうされるんですか?」
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