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「生物の中には自己をコピーして増えていくものも存在するが、ほとんどの生物は雌雄両方から遺伝情報を持ち寄って増えていく。多様であることは価値があるんだよ。
たとえば、今地球上に新しいウイルスが発生して大流行したとして、我々ヒトの多くは死ぬかもしれない。しかし、同じ種の中で生き残るものもいるだろう。
アンドロイドは姿形は違えど中身は単一だ。何らかのウイルスがばら撒かれて、誤った命令が実行されれば全個体が影響を受ける。抗えるアンドロイドはいない。だが、自我のあるアンドロイドだったら?その命令に従うかどうか、自分で判断できる。」
「それなら、言うことをきかないアンドロイドを創れば良いんじゃないですか?」
博士は頭を振った。
「違うんだよ。そういうことじゃない。意思というものは複雑なんだ。もう一つ例え話をしよう。弱った野生のウサギを発見したとして君はどうする?ある人は動物愛護の精神で保護しようとするかもしれない。ある人は自然に反することはできないと、そのまま放置するかもしれない。たまたま虫の居所が悪く殺してしまうなんて人がいる可能性もある。
生まれ持った性質に、育った環境、その人が積み重ねてきた経験……すべての出来事が絡み合っているんだ。
アンドロイドがこの問題に直面したとき、いくつか行動パターンを用意して、ランダムで選択するようにプログラムすることはできるけれど、そういうことではないんだよ。違うんだ。」
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