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交通に麻痺されると堪らないので、ここぞとばかりに定時で会社を上がった。居酒屋への道を急ぐ。会社のエアコンのせいか、風邪が喉にまでやって来た。咳は出ないが少々いがらっぽい。つまみと一緒に数杯飲んだらすぐお暇しよう…等と考えながら、マフラーを締め直して一層早く雪を踏んでいく。
一人黙りこくって歩く道では誰しも色々な事を考えてしまうと思う。私もそうだ。
最近よく「睡眠薬をくれ」と言ってくる同僚。
「合わなかったんだ」と私に防寒具のおさがりを一式くれた上司。
そもそもたまに会社を無断で欠席する後輩。
猟奇小説を読む知り合いなんて何人もいるし縄なんて誰でも買える。
周りの全員に震えあがる、街角。
「新装開店の__です、宜しくお願いします」
キャッチにそう言われ前に出されたものを反射的に受け取ると、居酒屋のチラシと貼り付けられた個包装ののど飴だった。どちらもタイミングが良い。
「結構遠いが…行ってみるか」
チラシを地図の方向に回しながら、有難くのど飴を口に入れ、私は道を急いだ。
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