引っ越し

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北海道人は……と言うか、雪国育ちの誰もが持っている超能力(すごいちから)がある。 寒い日が続いたある日、目を覚ますと同時に『雪が積もっているぞ!!』とカーテンを開けずに分かる能力(ちから)だ。 衝撃的な父の引っ越し宣言から一週間後。 目を覚ました時にそんな雪の予感は無かったのに、寝ぼけた頭で外を見ると真っ白だった。 窮屈な椅子。腰にはベルトが巻かれ、隣には同じように父がいた。 「起きたか。雲の中だから揺れるんだ」 テキサス州ダラス行きの飛行機。 何時間寝ていたのか、飛行機は速度と高度を落とし始めているようだった。 「そろそろ着くの?」父の向う側から母の声がした。 「英語はわからんが、そのようだな」 3日前の木曜日に母から聞いたのは、父の勤める会社がダラスに支店を作り、創設指揮を父が任されたということだ。 英語どころか、標準語のイントネーションすら怪しい父がだ。 そして、支店が軌道に乗るまでどのくらい掛かるかわからないから、家族皆で行くことにしたらしい。 「っておとうさんの会社の人に教えてもらったの」 「とうさんから聞いたんじゃ無いのか」 「無いのよ」 だろうね。 「てさ、大正13年のアメリカって何年?」 「さあ、何年かしらね。干支もわからないし」 だろうね。
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