0人が本棚に入れています
本棚に追加
北海道人は……と言うか、雪国育ちの誰もが持っている超能力がある。
寒い日が続いたある日、目を覚ますと同時に『雪が積もっているぞ!!』とカーテンを開けずに分かる能力だ。
衝撃的な父の引っ越し宣言から一週間後。
目を覚ました時にそんな雪の予感は無かったのに、寝ぼけた頭で外を見ると真っ白だった。
窮屈な椅子。腰にはベルトが巻かれ、隣には同じように父がいた。
「起きたか。雲の中だから揺れるんだ」
テキサス州ダラス行きの飛行機。
何時間寝ていたのか、飛行機は速度と高度を落とし始めているようだった。
「そろそろ着くの?」父の向う側から母の声がした。
「英語はわからんが、そのようだな」
3日前の木曜日に母から聞いたのは、父の勤める会社がダラスに支店を作り、創設指揮を父が任されたということだ。
英語どころか、標準語のイントネーションすら怪しい父がだ。
そして、支店が軌道に乗るまでどのくらい掛かるかわからないから、家族皆で行くことにしたらしい。
「っておとうさんの会社の人に教えてもらったの」
「とうさんから聞いたんじゃ無いのか」
「無いのよ」
だろうね。
「てさ、大正13年のアメリカって何年?」
「さあ、何年かしらね。干支もわからないし」
だろうね。
最初のコメントを投稿しよう!