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バスを降りるとかなり寒いことに気がついた。
引っ越し宣言の日曜日のように鼻水が瞬時に出てくる寒さだ。
バス停は無く、地面に落ちた時刻表しか無い。
しかも今のバスが最後の、というか一日で唯一のバスだったようだ。
降りたのは俺たち家族だけだ。
バス停から"人が歩いたから出来た道"が伸びていた。
「Are you ready?」と父が言った。
「Yeah!」と母が言った。
俺はしょうがなく「hey hey hey hey hey」と言ったのに、二人共続けてくれなかった。
縦に並んで道を歩いた。
都市無計画の道はデコボコや岩を避けて続いている。
三人共無言だ。
ただ頭の中には小泉今日子の学園天国がヘビロテ中だった。たぶん、父も母もだ。
フィンガー5ではない。・・・・・①
①を20分ほど繰り返し。
道の先に大きな岩が見えた。道はその岩を迂回していた。
その岩の向う側。道を進むと目的地を発見する。
そんな、映画のようなシチュエーションを願っていた。
そう、神に願った。
舗装を歩き慣れた足は悲鳴を上げそうだ。
そんな時、「この岩の向こうが我が家だ」と父が言った。
父よ、あなたは神だ。
俺はその時だけそう思った。
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